2017年12月07日

冬薔薇(ふゆそうび)

和ぎちゃまに贈った作。
やはり私は、短い文章がとてつもなく苦手なんだと実感した作でもある。


**冬薔薇(ふゆそうび)**

アルディのダイニングで、あたしはシャルルと向かい合って座っていた。
キャンドルの根元を飾っている白いバラの花には、まるで貴族のような長くて大げさな名前が付いていたけれど、何度聞いてもあたしには覚えられるはずもなく、最近は名前なんてどうでもよくなった。
だけど、真っ白いこのバラが、冬が深まるにつれてうっすらピンク色に染まっていく様をシャルルが気に入っているということだけは、それを聞いた時からすんなり頭に入っていた。
一緒に食事をするのは久しぶりだというのに、シャルルは用意された豪勢な食事には目もくれず、さっきからしきりに神経質そうな指を動かし紙にペンを走らせていた。
ひっきりなしに鳴る電話の受話器を、「ごめん。」と短く言って取っていたけれど、今はそれすら言わなくなって音が鳴るか鳴らないかのうちにボタンを押す始末。
オンフックで取られた電話の向こうからは、眠気を誘うフランス語が、きっと美しい女性なのだろうなぁ…と想像せざるを得ないような声で流れてくる。
無理を言って時間を作ってもらったあたしが悪いのかもしれないけれど、「バレンタインデーくらい一緒に食事したい!」って、お願い…いえ…少々強引に…いや…大声で怒鳴ってしまったことは仕方ないと思うのよね。だって、一緒に夕食を取ったのはいつだったかしら?と思い出せないほど前のことなんだもん。
でも、あたしは今、シャルルに無理をお願いしたことをとても後悔していた。
華やかな雰囲気も、とっておきのお料理も、愛する人が目の前に居る喜びも何もかも、シャルルがこんな風では寂しさが増すばかりだから。
それでもあたしは、運ばれてくるお皿をきれいにたいらげ、全く手をつけようとしないシャルルの分までいただいた。
「マリナちゃん。」
「へ??」
デザートに用意されたチョコレートのケーキを口に運ぼうとしたあたしは、急に呼ばれて手にしていたフォークを床に落とした。
「何を驚いている。」
シャルルの素っ気無い声が冷ややかに響いて、あたしの心を逆撫でした。
この散々な環境にあって何でそんな態度で居られるのか、シャルルが解らなかった。我慢も限界。文句を言ってやろうと、あたしは勢いよく立ち上がった。
だけどシャルルは、相変わらず紙にペンを走らせたまま顔を上げようともせずに、もう片方の腕を優雅にのばすと指先だけであたしを呼んだ。
「・・・・・?」
怒り狂うあたしとはあまりにも対照的な素振りに拍子が抜けて、あたしは、シャルルの横までのこのこと歩いていった。今度はあたしを呼んだ指先がデザートの皿の上に移動する。
「頂戴。」
シャルルは長いまつ毛を伏せたままこちらを見向きもせずに、横柄な口調でそれだけを言った。
プツン・・・頭の中で何かが切れる音が聞こえたような気がした。
「シャルル!あっ、あんたね!?」
「ソレが食べたい。」
我慢しきれず声を張り上げたあたしを遮って、シャルルは変わらない口調で今度はそう言うと、ようやく紙から視線を上げて物憂げにあたしを見た。
その日初めてまともに向き合ったブルーグレーの儚げな感じのする瞳は、口調とは違ってとても穏やかで、あたしは見蕩れてついつい言われるままに置かれていたフォークを取り上げケーキをすくった。
「それじゃない。」
「え?」
「その、ケーキの横のイチゴが欲しい。」
言ってシャルルは、微かに優しく目元を滲ませた。
あたしは驚き目を丸くしてシャルルに聞いた。
「知ってたの?」
「いいや。」
「じゃぁなぜ?」
驚きを隠せないあたしに、シャルルは大げさに溜息をついてみせると、持ったままだったペンをテーブルに置き、頬骨の下辺りに軽く曲げた指先をくっつけるようにしてテーブルに頬杖をついた。
「見たら分かる。」
「え?」
あっけに取られているあたしに向かって、シャルルは、こらえられないという風にくくっと笑うと、今度は皮肉たっぷりに言った。
「どうしたらこうなるのか、教えて欲しいくらいだよ。マリナちゃん。」
ひやぁ〜〜〜。上出来だと思ってたのにぃ。
あたしは文句を言ってやろうと思っていたことをすっかり忘れて、いい訳をたくさん早口で並べ立てた。本当はメインのお肉を焼こうとチャレンジしたこと、ケーキの試作を重ねたこと、マフラーの毛糸を選んで買った迄は良かったこと・・・でも結局、そのどれもが上手く行かずに、イチゴを切っただけに終わってしまったことを。
シャルルは、優しい目をして何も言わずに最後まで聞いてくれた。
そして、「ありがとう。」と嬉しそうに言ってから、指でイチゴを摘まみ上げ空に透した。
「可愛いバラだね。」
「・・・・・。」
あたしは閉口した。
シャルルが本気でそう言っているのか、それともからかっているだけなのか・・・確かめたい気持ちでいっぱいだったけれど、あたしは我慢した。
それは決してバラなんかではなく、ハートのつもりだったけど。
                              


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posted by マーガレット at 23:20| Comment(0) | 藤本ひとみ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年10月28日

N゜5

N゜5だけで通じるなんて、素晴らしいと思う。
香水。シャネルの。
マリリンモンローの有名な言葉のせいかもしれないし、そうでないかもしれないけれど。
とにかく香水を纏う習慣のない人にも一番知られているのが、このN゜5なんじゃないかと思う。
その香りが、新しくなった。シャネルの専属調香師オリヴィエポルジュによって。

ものすごい挑戦なんじゃないかと思う。
この香りを新しくしてしまうなんて・・・
だから、パラドックスなのだろう。
その言葉がやけにしっくりくると思った。

そして私は、受け入れ難かった。
おそらく古い人間なのだろう。
大袈裟に言うと、未来のために古き良きを破壊するようにも感じてしまう。
それに、私には、これがN゜5?
とまで思ってしまうような、まったく新しい香り。

なぜN゜5なのか・・・
新しいラインを出す話題性より、
この古き良き、高嶺の花的で、
誰にでも知られていながら誰もが纏うことを許されないような、
このN゜5を新しくする話題性。
そちらを選らばざるを得なかったのかもしれない。
なるほど、パラドックス。

**
シャネルのサイトはこちら。
すごく素敵です。
バネッサとジョニーの娘、リリー・ローズ・ディップが、これまた素敵。
http://www.chanel.com/ja_JP/fragrance-beauty/fragrance.html
サンプルも配られてるようです。
興味のある方はぜひ。^^

HABA ONLINE




posted by マーガレット at 12:19| Comment(0) | お気に入り | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年08月26日

シャルマリって・・・

「シャルマリ」って、私が知ったのは10年近く前かなぁ・・・
ネット徘徊するようになって初めて、見つけた言葉なのだけれど・・・
いったいいつからあるんですか?
そもそも、シャルル×マリナの構想?妄想?展開?なんて考えたこともなかった私にとっては、かなり衝撃的でした。

いや結局、シャルル×私(マリナと置き換え)妄想なんでしょうか?
それだとしたら、理解できる。

HABA ONLINE
posted by マーガレット at 16:53| Comment(2) | 藤本ひとみ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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